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嬉しいことがあったときは

必ず一瞬、哀しくなる。

その哀しさは、どうしようもないもので、滑稽なもの。

「死にたくないなあ。老いたくないなあ。」

そんなどうしようもないことを思って哀しくなる。


“刹那”を理解できるほど、何もかも知れる日なんてくるのかな、




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恋人の話

恋人の話を何度も書こうとしてやめた。言葉が追いつかなかった。言葉にしたら嘘みたいで、作り物みたいで、それも嫌で。

「金木犀が香る頃手を繋ぎ始めたその人の隣で、私は沈丁花の香りが連れてくる春に気づいた。」

ほらもう、嘘みたいだ。

私は恋が好きで、一生恋に恋して生きてくのかもしれないなあと、半ば人を好きになることを諦めていた頃に、今の恋人に出会って、気づいたら恋よりその人自身を好きになっていた。

掻き立てられて走り出して会いに行ったり、分かってるのにどっちも言い出さなかったり、そんな瞬間は最高だけど、その先にはもっと素敵なものがあることを今の恋人が教えてくれた。


本当に好きになったら、その人の替わりはいないみたいだ。優しさも脆さも強さも、恋人を作る要素すべて、ひとつだって欠けたらだめ

ふとしたときも、そうじゃないときも、だいたいいつも恋人のことが頭をよぎるし、開いた本の失恋物語も、いつか自分が体験するのかもしれないと思うと泣きそうになる。春の夜に観覧車にも乗りたいし、ワインを飲みながらずっと話していたい。私がおばあちゃんになっても手を繋いでほしいし、私の25歳の春も夏も秋も冬も、どんなシーンにもそこに恋人がいてほしい。毎日台風で、布団の暗がりの中で生きていけるなら最高だ、いっそ猫になって隣で丸くなって眠れたらどんなに幸せだろう、そんなことを思うほど、この恋を失うのが怖い。


早く夏が来てほしい。だってまだ夏の夜にアイスを買いにコンビニまで散歩したことないから。もしもこの恋が終わってしまったとしても、きっと私は何度も、幾つになっても、最初に恋人の部屋に行ったあの夜と、展望台からの夜景のことを、思い出す。


ほら、結局、恋人に関して、言いたいことなんてまとめられない。

締めの言葉も見つからない。だからそれっぽいことを書いておこう。

「世界は広いけど、恋人がいる場所が宇宙の真ん中だ。」