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一番最初の金木犀の香り

秋がきて、気付いたらどんどん元気になった。ぎりぎりのところで、それでも腐らないでいたら、ちゃんと良いことが沢山あった。この秋初めての金木犀の香りに気付いたとき、隣には好きな人がいて、その瞬間、驚くほど満ち足りた気持ちになった。心の中の色んな角が取れて、まあるくまあるくなっていくような気がした。手の甲に、こめかみに、身体の奥の方に、あたたかい光が流れていくような感覚がした。私もちゃんと物語の主人公なんだな、と幸福で同時に誇らしい気分になった。

だけど、そんな奇跡みたいな瞬間は本当に瞬間だって知っている。知っているからこそ、しっかりと切り取って心の中に思い出として残しておく。辛い時にはそこからそっと会いたい人や味わいたい気持ちを取り出して、ああこういう瞬間があるから今までやってこれたな、これからもきっとこういう瞬間があるから生活を続けようって思えたりする。

もちろん私は本当に欲張りだから、その奇跡みたいな瞬間を日常的に味わいたいと思ってしまうし、もっと素敵な奇跡を見てみたいと思ってしまうし、少し嫌なことが起こるとそのことで頭がいっぱいになって「選択を間違えちゃったなあ、私はだめだなあ」なんて簡単に思ってしまいがちだけど、どんなに行き詰って先が見えない状況になっても、今まで起こったキラキラした一瞬はなかったことになんてならない。それをちゃんとわかっていれば、私は何度でも自分を持ち直せるっていつも思う。




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日々

恋人が「これあなた好きそう」と言うときは、本当に毎回、私の趣味にぴったりだから驚く。昨日は「独身女性が毎回やさぐれながらご飯を作る韓国ドラマ」っていうすごくニッチなものですら、概要話しただけで(ほぼこの通りに言った)「ああ、好きそうね」と言ってきた。なんで分かるんだろう、ほんとにすごい。 恋人は優しい。今まで出会った男性の中で1番優しい。優しくて優しくて、その1番の優しさがどうか他の人に向きませんように、ああこの優しさを過去にも誰かが貰っていたのか、と思って無駄な嫉妬心を抱いてしまうほど、優しい。
普通の男性なら怒るところを怒らないし、つまらないプライドが全然ない。だけど誇りも芯もある。加えて、愛嬌と可愛らしさもある。誰が見ても好青年だし、誠実だ。不器用なところもあるけど、器用な嘘つきより、不器用で一生懸命な人の方がずっとずっと魅力的だ。
恋人の隣にいるととても安心する。ありのままの自分を受け入れてもらえることはこんなにも素晴らしい気分になれるんだなあと私は生まれて初めての気分を毎日発見する。

夜はよく眠れるし、苦手な朝も少しだけ頑張ろうと思える。私は素直じゃないから、少女漫画かってくらい本人の前では意地悪なことばかり口にしてしまうのだけど、本当はいつも、恋人のことを考えている。
わかち合う日々は、愛しい。 雨の匂いとか、犬が可愛いとか、さぼりたいねとか、そんなことを言い合える日々。
梅雨が終われば夏がくる。平成最後の夏だ。必死に紫外線と直射日光を避けながら、私はあなたと色んなものを見て、食べて、聞いて、考えて、この夏を駆け抜けたい。